失楽園-愛は面倒だなあ
20世紀の最後数年間における日本のベストセーラ-という、渡辺淳一氏の小説「失楽園」を上げなければならないだろう。1995年9月から日本経済新聞の朝刊に連載が始まると。たちまち日本列島を風潮した。一時は人々の茶飲み話しの種にもなり、諸大企業のリーダー達まで毎朝出る例会の前の中心話題にものぼったこの小説は?単行本にまとめられて出版されるや、短期間で数百万部も売れ?すばやく中国語を含めた数外国語に翻訳された。まさに「洛陽の紙価を高めた」のである。そして?テレビドラマや映画にも作り直されて?1997年の映画の配給収入だけでも23億円に及び?その年のトップを占めた?各メディアの報道と評論も殺到して?「城じゅう争って蔡中郎を語る」盛況を呈し?人をいささかまどわす、いわゆる「失楽園現象」までも生じたのである。
作品のストーリーはそれほど複雑ではなく?語られたこともありふれた恋愛物語である。ヒーロ-は久木祥一郎といって?仕事に失意した中年の男である。ふとしたことで?ある学習センターで書道教師を勤めている松原凛子と知り合う?凛子も虚為な家庭生活に不満を感じているので?二人はお互いに愛情を傾けて愛し合った、そのために、多くの「不倫」男女と同じように?二人は家庭?社会?そして久木の勤めた社会から圧力をかけられ?非難された。また自分たちの愛は長続きできるものか?時のたつにつれて水のような淡いものになってしまうのかと一抹の不安が心をよぎる?それで誠に愛し合っている今のうちに命を絶つことにする?日本の著名な景勝地である軽井沢の別荘で?二人は自分達なりの方法で?相手への「愛の承諾」を実践した?と。
話の結末はあわれなものであった?勿論?「心中」--愛し合った男女が身を以て愛に殉じることは?日本史上でもありきたりで、けっして珍しくはなく、むしろ日本文化の重要な一側面をなしているとでもいえるぐらいである。にもかかわらず、「失楽園」の主人公たちはその言い表せない魅力で?読者や見る人の心に強く訴えて?なんともいえない熱い涙を流させることができた?或いは歴史があまりに古くて遠いからか?或いは現実があまりに表面的でかまびすいからか?愛という神になり?惑っているのは実情のようだが?上述の感動はやはり?人々を再度この失われつつある楽園にひきもどすことがある程度できたと思う。